身体の不調は人それぞれ異なります。頭痛や目眩を訴える人もいれば痺れや耳鳴りに悩まされている人もいます。精密な検査をしても原因が特定できない場合も多いのですが、東洋医学ではそれらの症状は「過去に経験したことがあるケース」のため、どのような治療が効果的なのかを特定することができます。
東洋医学は患部だけでなく全身を診る医学です。例えば腰痛に悩まされている場合、西洋医学では腰の痛みに注視しますが、東洋医学ではどのように痛むのか、痛む時間帯は決まっているのか、生活環境や体質はどうかなど患者さんのすべてを総合的に診て治療法を判断します。身体のさまざまな状態を考慮して治療法を選ぶため、1人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療ができるのが東洋医学の強みです。
根本にあるのは「人は自然とともに存在しており、身体の原理と自然の原理は同じ」という考え方です。自己治癒力を最大限に引き出すことを重要視しているため、痛みに無理に逆らわず身体に負担をかけない「副作用のない自然療法」ともいわれています。
東洋医学の目的は未病を治すことです。未病とはまだ病気になる前で何かしらの兆候が現れている段階のことです。顔色や舌、目の動き、脈拍などから病気の前兆を見つけ出していきます。未病には病院の検査では問題ないとされるレベルのものも含まれています。そのため、治療は必要ないと思いがちですが、自分の体質などから病気の兆候を見つけ出せれば進行する前に防ぐことができます。東洋医学は予防医学の観点で見ると最先端の治療であるといえるのです。
全身を診る東洋医学は予防医学として大きな効力を発揮します。しかし、自分の体質を知り、自己治癒力を高めていくことを目的としているため、緊急を要する症状に対する手立てが乏しいという欠点があります。外傷の場合は傷口が早く塞がるように免疫力を高めるといった方向で考えるため、傷口を一刻も早く防ぐという外科的な治療はできません。命に関わるような緊急性の高い病気やケガは西洋医学に比べて治療法が乏しいため対処しきれない場合があります。
東洋医学の主な治療法は鍼灸や漢方です。術者が患者さんを直接施術するため、術者の技量に左右されやすいという欠点もあります。治療院によって行う内容が異なりますし、舌や顔色、脈拍などは基本的に数値化できないため見た目で判断します。西洋医学のように検査を数値化・画像化して判断されるわけではありません。どこの病院でも一定水準の効果ができる西洋医学とは異なり、東洋医学は術者の知識や経験によるところが大きいのです。そのため、どこの治療院を選ぶのか、どの術者を選ぶのかが重要になってきます。
病気やケガの原因を突き止め、それを除去することを目的とした東洋医学は健康な状態を保つために「気」「血」「「水」の3つのバランスを崩さないことが大切だと考えています。
漢方薬は長期間継続して服用することで効力を発揮すると考えられていますが、風邪の症状を緩和するのに有効な葛根湯や倦怠感を解消する補中益気湯など即効性の高いものもあります。
東洋医学の治療法のひとつである漢方は、「大人を対象とした治療法」というイメージが強いのですが、最近は子どもにも高い効果が期待できると関心を寄せる小児科医が増えています。