漢方薬は天然由来成分の医薬品です。副作用はほとんどないだろうと思っている人もいますが、飲み合わせや服用量によっては副作用が起こる場合もあります。医療用として処方されている漢方薬の種類は約148種です。漢方薬は2種類以上の生薬から構成されていますが、その種類や服用量は人によってさまざまです。1種類だけでなく2~3種を処方されることもありますが、それぞれの漢方薬に含まれている生薬が重複し副作用が起こることがあります。
漢方薬の副作用は次のような場合によく起こります。
漢方薬は他の薬に比べてすぐに効果が現れないからと規定量以上を服用した場合や自分の判断で複数の漢方薬を服用した場合、生薬が含まれていると気づかずに市販薬やサプリメントを併用した場合などです。
副作用を起こしやすい生薬の一例を紹介します。
咳や喉の痛みに効果のある「甘草(かんぞう)」は一般的によく使われている漢方薬ですが、血圧が上がったり、むくんだり、手足がしびれたり、つっぱり感やこわばりを感じたり、筋肉痛になったりといった副作用があります。
風邪の初期症状の熱などに効く「麻黄(まおう)」は、動悸や不眠、多汗、胃もたれ、食欲不振、みぞおちの痛み、下痢などの副作用があります。
関節や筋肉の痛み、頭痛や冷え性などに効果のある「附子(ぶし)」はトリカブトという毒性の強い植物を原料としています。漢方薬として使用する際は毒性を取ってあるので安心ですが、唇や舌の痺れ、手足の麻痺、吐気・嘔吐、動悸・のぼせ・発汗などの副作用があります。
貧血や虚弱体質の改善に効果のある「地黄(じおう)」ですが、胃もたれや食欲不振、みぞおちの痛み、下痢などの副作用があります。
吐き気や下痢などの時に用いる「黄ゴン(おうごん)」は、アレルギー反応が出やすい漢方薬です。発熱や乾いた咳、呼吸困難、眼球の白目や皮膚が黄色くなる、全身にだるさや痒みを感じる、食欲不振、不眠などの副作用があります。
漢方薬の副作用は、飲むことをやめれば治まることがほとんどです。しかし、長期間飲み続けることが必要な場合もあるでしょう。その場合は副作用が出始めた段階で病院を受診し医師に相談しましょう。副作用を我慢しているうちに肺が固くなる「間質性肺炎」や「肝機能障害」、筋力が低下している「偽アルドステロン症」などを発症する可能性があるからです。
特に、3種類以上の漢方薬を併用している人や身長が低く体重が軽い人、糖尿病でインスリン治療をしている人、肝臓疾患で治療中の人は副作用が起こりやすいので注意が必要です。
病気やケガの原因を突き止め、それを除去することを目的とした東洋医学は健康な状態を保つために「気」「血」「「水」の3つのバランスを崩さないことが大切だと考えています。
漢方薬は長期間継続して服用することで効力を発揮すると考えられていますが、風邪の症状を緩和するのに有効な葛根湯や倦怠感を解消する補中益気湯など即効性の高いものもあります。
東洋医学の治療法のひとつである漢方は、「大人を対象とした治療法」というイメージが強いのですが、最近は子どもにも高い効果が期待できると関心を寄せる小児科医が増えています。