西洋医学で処方されている西洋薬は人工的に化学合成された物質から構成されています。ひとつの成分から構成されているため、対象とする疾患や症状は限られています。それに対して、天然由来成分の生薬を使用している漢方薬は原則として2種類以上の生薬から構成されています。多くの成分を含んでいるため、ひとつの漢方薬でいろいろな病状に対応できます。また、自覚症状があるものの病院の検査や画像診断で異常が見つけられない場合にも治療の一環として漢方薬が大きな効果を発揮します。しかし、手術が必要な場合や緊急を要する疾患の場合は漢方薬では対処しきれないため、西洋薬の方が優れているといえます。
天然由来成分のものは漢方薬だけではありません。ハーブもそうです。ただし、漢方薬はセミの抜け殻や牡蛎の貝殻、骨や角といった動物由来のものを使用するのに対し、ハーブは植物だけです。また、漢方薬は2種類以上の生薬を決められた配合量をもとに組み合わせており、漢方医学の理論をもとに医薬品として処方されますが、ハーブは医薬品として認可されていないものもたくさんあります。ハーブティーやアロマなどに用いられていますが、医薬品として認められているのは赤ブドウ葉やチェストベリーなどのほんの一部です。
ハーブティーでよく使用されるのは、レモングラスやカモミール、ペパーミント、シナモンなど身体に変化をもたらす成分を含んでいる植物です。シナモンは桂皮とも呼ばれており、漢方薬でも使われています。ハーブティーと漢方薬、どちらにも使用されている共通の植物は他にもありますが、ハーブはあくまで民間療法のひとつです。症状を緩和することを目的として生薬を組み合わせている漢方とは異なり、飲みやすさを重視してブレンドしています。何よりも味を重視しているため、漢方薬のように「まずい」「苦い」を感じることはほとんどありません。
これは医薬品か、食品かの違いです。漢方薬はさまざまな症状を改善するために決められた配合で生薬を組み合わせる医薬品ですが、健康食品やサプリメントは日常生活で足りない栄養素を補給する食品です。ビタミンやミネラル、鉄分など個々に足りない栄養素をサプリメントで補うことはできますが、病気やケガの治療に直接効果はありません。治療には効能が認められている漢方薬を使用し、不足しがちな栄養素は健康食品やサプリメントで補うといいでしょう。
病気やケガの原因を突き止め、それを除去することを目的とした東洋医学は健康な状態を保つために「気」「血」「「水」の3つのバランスを崩さないことが大切だと考えています。
漢方薬は長期間継続して服用することで効力を発揮すると考えられていますが、風邪の症状を緩和するのに有効な葛根湯や倦怠感を解消する補中益気湯など即効性の高いものもあります。
東洋医学の治療法のひとつである漢方は、「大人を対象とした治療法」というイメージが強いのですが、最近は子どもにも高い効果が期待できると関心を寄せる小児科医が増えています。